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第5話 昼から慌ただしい1日だった。 クレーム対応に走ったり今日搬入予が現場に届いていなかったり、散々な1日だった。 ひとしきり落ち着いた20時過ぎ、会社の喫煙ルームでタバコと缶コーヒーで一休みしながら1日の仕事思い返していた。 アワーワールドも数時間ぶりに起動した。今日全然触ってなかったなっていまになって気付いた。というより電話の嵐でそれどころではなかった。 開いて意外だったのが木曜日なのにチャットが賑やかだった事だ。普段だと木曜日はボード開始前は比較的皆静かなのだが、今日に限ってはチャット未読が50件を超えていた。 開けてみると様々な会話で賑わってる様子が見えた。なかなかINできないときはログが流れてしまっていたり会話の話題についていけなかったりするのだが今日は見てすぐに理由が分かった。 Lobiでメンバー募集した成果がすぐに表れたようで新メンバーの方が入ってくれたようだった。 みな質問責めで新メンさんはちょっと戸惑っている感じがした。 見るとアイコンはアンナの黄色で「あんにゃん」というニックネームの方だった。アンナを見てふと朝の彼女を思い出してしまった。 そういえばあの子もアンナで同じ名前なんだよな…だがすぐに、何をいい歳して女子高生の事を考えてるんだと首を横に振った。 女子高生なんてワードを口の軽い青木なんかに言ってしまったらそれこそ社内でロリコン扱いされてしまう。そんなこと考えるだけで恐怖だ。 ふと周りに青木がいないか見渡してしまった。 チャットを見るかぎりこの人が男性かも女性かも分からないし、まだ突っ込んだ話をする程コミュニケーションも取れていない。仲良くなったら色々話してみたいなって思った。 他のメンバーもまだ距離を探りながらチャットしてる感じが見てとれた。 やはり新しい方との出会いは新鮮だし楽しみだ。仲良くなれるといいな、そう思いながら新メンさんにメッセージを送った。 「あんにゃんさんはじめまして( •̀ω•́ ) よろしくお願いしまーす♪」 すぐに返信がきた。 「よ、よろしくおねがいします!」 あんにゃんさん緊張してるのかな?チャットなんだから緊張しなくていいのに、とちょっと笑えた。 タバコを3本吸い終えた所で残りの仕事チャチャっと片付けて帰ろうと意気込んだ。 早く帰って子供に会いたい。 息子の事を思い出すと自然に元気が湧いてきた。 続

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新しいチームを探してみようと先日インストールしたのだ。名だたるチーム名がいっぱい募集をしていて自分なんかじゃ…って思っていたときひとつの募集スレを見て驚いた。 募集投稿者のアイコンが彼の携帯の待受と一緒だったのだ。単なる偶然かもしれないと思ったがどうしても気になってしまった。 良く知られたキャラクターだし、この待受を使ってる人はきっと何千人、何万人といるはず…けどどうしても気になって仕方がなかった。 だが募集してるチームは日本屈指のチームだった。みな討伐数が高く桁が違うメンバーもいた。メンバー一覧を見るとLobiで募集をかけてる人と同じ名前のメンバーが居た。思わず胸が高鳴った。 けどどうしよう…こんなチームでやっていけるわけないし承認されないかもしれない。 前のチームは脱退したのはいいけど、リクエストボタンを押す勇気がなくてしばらく固まっていたら昼休憩終了のチャイムが鳴った。授業が始まったら携帯はロッカーにしまわないといけない。 思い切ってリクエスト押そうと思ったけど結局押せずロッカーに戻してしまった。 夕方学校終わったらリクエストしよう。 そう決めて教科書を開いた。 続

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第4話① 昼下がりの教室、頭がずっとボーッとしていた。午前中の授業の内容など到底頭に入ってくるはずもなかった。朝の出来事が自分にとって色々起こりすぎたからだ。  廊下では同級生の男子達が下衆な会話で盛り上がっている。よく大声でそんな会話ができるものだと私は溜息をついた。 朝の彼のような大人な男性しか興味がない、むしろ彼がいいと思う程気持ちだけが膨らんでいった。 朝作ったお弁当も食欲が湧かず半分以上残したら一緒にご飯を食べてた友人達が心配していた。 「杏奈がお昼ご飯残してるー、珍しい」 「どーしたの?お腹痛いの?」 「ダイエット始めたの?」 ご飯を半分残しただけでこの言われよう、 益々溜息が漏れてしまった。 本当は友人達に話をしたいのだが、気になってる人が20歳以上離れている為 引かれるんじゃないかと言えずにいた。私が年上好きなのは友人達も周知の事だが、さすがにこれだけ離れている事には想像も及ばないだろう。 結局あの後名前を聞くことはできなかった。次の停車駅で乗車する人が多く、彼との間に変なおじさんが割り込んできたため少し離れる格好になってしまった。 私の方が目的の駅が近かった為、降りる時彼に軽く会釈をすると、彼はニコッと頬を緩ませ笑ってくれた。まるで行ってらっしゃいって言ってくれたような爽やかな笑顔にキュンとした。名前は聞けずじまいだったけど、明日の朝にはまた彼に逢える。そう考えると顔がにやけそうになる自分がいた。会ったら何て話しかけよう、昨日はありがとうございましたかな、って妄想を膨らませていた。 お弁当をカバンにしまい、ロッカーから携帯を取り出してアワーワールドを起動した。私の所属しているチームは基本的に誰も喋らない、ミッションもやったりやらなかったり、空気のように存続しているチームだ。最初は適当にインストールしたアプリだが、ゾンビを銃で倒す単調な作業が自分にしっくりきて続けている。 なので討伐数はチーム一番だ。一人ミッションなども殆ど一人で行なっている。 けどやっぱりみんなとチャットしたり、協力しながらゲームを進めていくのに憧れがずっとある。一人でやっててもつまらないのだ。 友人達がFacebookやTikTokで盛り上がってるのを尻目に最近知った攻略情報アプリLobiでメンバー募集中のグループをチェックしてみた。

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第3話 初めての遅刻だ。今日は朝から会議だったのに完全に遅れてしまった。 会議室に入り上司に謝罪し椅子に座り、昨晩のうちにまとめておいた今月の売上、粗利着地見込や受注状況や重点先の様子等を報告し、部下の数字チェックなどを行った。 会議が終わるや否や後輩の青木が近寄ってきて「寝坊なんて珍しいですね」と性懲りもなく絡んできたので頭を叩いた。 別に寝坊をしたわけではない。いつもの様に同じ時間の電車に乗ったのだが、そこでトラブルがあったのだ。 生まれて初めて痴漢の現場を目撃してしまったのだから一瞬動揺してしまった。 最初見間違いかと思ったが明らかに高校生の女の子が泣きそうな顔になっている。 そしてその子が毎朝見る女の子だとすぐに分かった。下手に大声を上げてしまうと女の子に恥ずかしい思いをさせてしまうかもしれない、そう思い痴漢犯の腕を咄嗟に掴み耳元で次の駅で降りるよう促した。相手は掴んだ腕を力づくで払おうとしたが自分の方が腕力は上だった。そして睨んでいると痴漢犯は半ば諦めたような顔つきになった。 女の子にも降りてもらい、駅員に経緯を伝えると痴漢犯は連れていかれた。 女の子はまだ身体が震えていた。大丈夫じゃないだろうけど他にかける言葉が見つからず大丈夫?としか聞く事ができなかった。 名前杏奈ちゃんていうのか……出先で見つけた定食屋でとんかつを食いながら彼女のことを思い出した。あれから大丈夫だったかな、学校間に合ったかななど考えていたが、それよりやっぱり可愛いなって気持ちの方が強かった。決して恋愛対象ややましい気持ちの可愛いではなく、客観的に見て可愛らしい女の子、そういう意味なんだと自分で自分に伝えていた。 けど彼女だから助けた、それも事実かもしれない。 定食を食い終わってタバコに火をつけアワーワールドを起動した。 自分のチームは皆アクティブなメンバーが揃っていて、チャットはログがすぐ流れてしまうくらい盛んだし、フレアは一日中誰かが上げてくれている。そのおかげで日本屈指のチームのようだ。 メンバー同士のチャットのログを見て笑い、空いた時間に討伐をする、それが自分の毎日の日課のようなものだ。但し何より仕事を疎かにしない、それだけは決めている。 先月メンバーの1人が脱退してしまってから新しいメンバーが入ってこないため、久しぶりにLobiで募集をかけることを思いついた。 続

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第二話 彼の携帯を凝視していると彼は視線に気付き少し怪訝な顔で「どうしたの?」と聞いてきた。 私は咄嗟に首を横に振ってしまった。 私もそのゲームやってるんです、何故その一言が言えなかったのか。その一言で会話が弾んだかもしれないのに…。後悔の念が自分に押し寄せてきた。しばらくすると電車がホームに到着した。彼の後ろに続き電車に乗り込む。隣に立ってていいのか、少し距離を取った方がいいのか、そんなどうでもいい事に悩んでいたら彼が手招きしてくれたので隣に立った。ついさっき痴漢に遭ってしまった自分を心配してくれてくれているのだろうか。 そう思ったら嬉しい気持ちになった。 相変わらず彼は携帯をいじっている、ゲーム内のチャットをしているようだ、時折笑みを浮かべながら文字を打ち込んでいる。 きっといま彼の中に私の存在はないんだろうな…と考えるとさっきの嬉しい気持ちから一気に寂しい気持ちになってしまった。 私はハッとした。彼の所属チームやゲーム内の名前が分かれば何食わぬ顔でそのチームに入れば、チャット内で彼と繋がる事ができる。彼に連絡先を聞けばそれで済む話だが、到底そんなミッションクリアできるはずもない。彼の携帯を横目で覗き込もうとするが、身長差もあり到底見ることができない。 彼の左手がもう少し下にくれば…そう願っているとおもむろに彼と目が合った。 「そういえば名前聞いてなかったね」 いきなりの問い掛けにびっくりした私は 「あ、杏奈です」 とどもって答えてしまった。名前聞かれた時苗字で答えた方がよかったか、いきなり名前名乗ってよかったかとか訳が分からなくなって熱が引いた顔がまた赤くなってくるのを自分でも感じた。 彼はニコッとして「可愛い名前だね」って言ってくれた。私はもう立っていられないくらい身体が熱くなるのを感じた。 頭がボーッとなった私はとっさに彼に名前を聞いてしまった。シラフだと到底聞けなかったから結果よかったかもしれない。 「オレ?オレの名前は…」 彼がそう話し始めた時反対車両と交差する音でかき消されてしまった。 彼の動く口を見る事しかできなかった。 続

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週初めの月曜日 特に朝は憂鬱だ やりたい事が見つからず 敷かれたレールの上を歩くように 勧められた私立の高校に通うことになったのだが、電車とバスを利用して1時間半かかるため通学するだけで疲れてしまう。 特に月曜の朝の満員電車など最悪だ。 しっかり準備した髪型もメイクも人混みでぐちゃぐちゃにされかねない。 けど最近楽しみな事が1つだけある 1ヶ月ほど前 満員電車の中で痴漢に遭ってしまい、怖くて声も出せず怯えていたら 1人の男性が気付いてくれて痴漢してた男の腕をぐっと掴んでくれた。 その人は騒ぎになって私が恥ずかしい思いをしないよう 痴漢男を静かに次の駅で下ろし駅員を呼んでくれた。 恥ずかしくて助けてくれた人の顔もまともに見えなかった時、「大丈夫?」って優しく声を掛けてくれた顔がかっこよくて余計に顔が赤くなってしまった。 よく見ると毎朝同じ電車に乗ってる男性だとすぐに気付いた。なぜなら前からその男性の事が気になってる自分がいたからだ。 次の電車を待っている間少し話をすることができた。彼は38歳の商社勤務だという。商社というのがよく分からなかったが馬鹿だと思われたくなかったので知ったかぶりをしてしまった。 それより38歳と聞いて驚いた。もちろん自分より年上で社会人なのは分かっていたが、パッと見る限り20代後輩くらいに思っていたからだ。 普段は男らしい顔立ちなのに、時折笑う彼の顔が可愛く、自分の胸の鼓動がずっと鳴り止まない。胸の鼓動が彼に聞こえていないか余計に恥ずかしくなった。 けどしばらくすると会話がなくなり沈黙になってしまった。聞きたい事はいっぱいあるのに緊張して声が出ない。同じ空気を感じたのか彼はポケットからスマホを取り出しゲームを起動しているのを見てあたしはハッとなった。 彼が起動したゲームは私もやっているゲーム… そう…「アワーワールド」